(お話)自分を大切にする
2019年に豊川高校の伝道句で使用したものです。
永平寺を開かれた道元禅師さまのお言葉に、「身心、みずからも愛すべし、みずからも敬うべし」とございます。一生懸命修行をしているときの自分の身と心を愛しましょう、敬いましょう、そして大事にしましょう。という意味です。修行というと、ひたすらに信じ、それを行うことと思われがちですが、そうではありません。自分自身を大切にすることも修行の一部なのです。
永平寺での修行をおえた私は、名古屋の栄にある、とある企業に営業として勤めていました。課せられた営業目標があり、それに向かってひたすらに働く、という日々でした。その会社はほんとうに厳しいところで、朝は5時30分から働いて良い、とされおり、夜は11時30分まで会社に居残りすることができました。私の前任が徹夜で勤務していた最中に脳卒中で倒れたため、このルールができたとのこと。決算期が近づくと、早朝はまだ電車が動いていないので、朝5時にタクシーが迎えに来るように手配をします。起きられないときは、そのタクシーの運転手のインターフォンで起こされ、出社しました。日中は客先をまわり、夜は11時30分まで資料をつくりました。日によっては断り切れずに上司とお酒を飲みに行き、帰りが深夜になったりしました。なんとか売り上げの目標はクリアしていました。私にとってそれは最優先事項だったのです。運が悪いことに、土日に外せない僧侶としての用事もあり、それもこなさなくてはならなくなりました。年が明けしばらくしたとき、それは突然やってきました。急に働けなくなってしまったのです。熱はなく、痛いところはないのに全く体が動かなくなりました。医師にすすめられ、私は会社を辞めざる負えなくなりました。
私はこれまでのことを反省しました。目先の結果だけにとらわれて、自分自身の心や体を酷使するばかりで労わることを全くしてこなかったのです。その後、良い先生や隣人に助けられなんとか社会復帰できたのは、ほんとうに幸運だったと思います。
道元禅師さまのお言葉は、僧侶としての修行を前提にしていますが、私は仕事や学校をはじめ、日常の活動すべてにあてはまることだと考えます。「身心、みずからも愛すべし、みずからも敬うべし」ひたすらに打込むだけではなく、自分自身の心や体と向き合い、対話して、それを大切にしてください。
令和3年10月24日
北松山 西湖院 小原良淳
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